Diverse技術研究所

Dating Scienceについて

生体情報を呈示する婚活イベント支援システムAnemoneの開発

f:id:esoramaya:20170116114244j:plain 『Anemone(アネモネ)』は、発汗・心拍・体温などの生体情報を愛の肥料とし、愛の花を咲かせるコミュニケーション支援システムです。

 

2016年の5月から開発を始め、様々なデモを行いました。現在の実装に至るまでの7ヶ月間を振り返ります。

 

 

開発の経緯

日本の生涯未婚率は上昇しています。独身に留まっている1つの大きな理由は「適当な相手にめぐり会えない」というものです。より愛を深められるお相手との出会いを求めて、短時間で複数のお相手と交流できる婚活イベントの人気は高まっています。

しかし短時間で交流できるお相手の数が増えるほど、対個人の総体的なコミュニケーション量は減少します。過去の調査では、婚活イベントなどで口説かれたとしても、相手が真実を述べているか分からず不信感を抱くケースが存在することが分かっています。イベント後にも会いたいと思える相手かどうか判断に困り、次のデートに誘うための一歩を踏み出しづらい実態を想定できます。

我々は婚活パーティなどの出会いの場で、相手を選ぶ際のサポートが必要であると考えました。

近距離コミュニケーションの拡張

遠隔地同士のコミュニケーションはインターネットの発達とともにめざましく進化してきました。これまで行われてきたDatingに関する研究の多くは、遠隔地にいる恋人たちのためのコミュニケーション支援に集中しています。online datingに関する研究も最近になり活発になっていますが、これらは「出会う前」と「交際後」のための支援に留まっています。

しかし我々はこれから交際する可能性がある「すでに出会った」人々を支援することを目的としています。遠隔地同士のコミュニケーションのゴールは、より対面に近い状態に近づけるところにあると考えていますが、Diverse技術研究所では、それはゴールではなくあくまでも辿り着いた先はスタートであり、対面のコミュニケーションこそ発展していくべきものだと捉えています。

Anemoneのシステム概要

ユーザはAnemoneを挟み対面で着席し、センサ部に指を置きます。両ユーザの生体情報に応じてAnemoneが成長し、開花すると光の演出が行われ、満開になれば花を取り外すことが出来ます。事前に花に連絡先を書いておき、男性から女性に「愛の花が咲きました」と手渡すことも可能です。時間内に満開にならなければ花は蕾に戻り、ユーザは座席を移動することになります。

システム構成

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Anemoneは、センサ部と花瓶部に分類されます。センサ部には心拍情報を検出するためにLED光方式の心拍センサを設置します。検知された値が一定の閾値を超えると、花瓶部に設置されたアクティブサスペンションが上昇して花を押し上げ、開花させます。

開花したことを通知する際には花瓶内のLEDが点灯し、時間内に満開しなかった場合はアクティブサスペンションが下降して花が蕾に戻ります。

展示の様子

TOKYO DESIGN WEEK2016 100人展

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開催期間中の通算来場者が10万人を超えるこのイベントには家族・友人連れの客層が多く、一度に複数人でAnemoneに触れる人が大半でした。アートイベントで初対面の男女の客を即席でペアリングすることが難しいことから、システムを変えて、比較的花が満開になりやすい仕様に対応し展示しました。

体験者は500人前後であり夫婦もしくは恋人の異性カップルが過半数を越え、次いで同性の友人同士や親子が花の咲く様子を相性診断ゲームのように楽しんでいました。

また、花が反応するたび被験者が笑顔になる点が特徴的でした。

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企画展「動く展」

藤田が主催しているイベント「動く展」において、2016年12月2日から11日までの10日間、ギャラリーに本システムを出展し、来場者に自由に触れてもらいました。

展示会場の特性上1人でシステムに触れる客が多く、相性診断というよりも、作品として花の咲く様子や光の演出を楽しむ客層がメインでした。婚活イベント支援システムという前提のテーマだけでなく、空間演出アイテムとしての可能性とデザインの方向性を見出すきっかけとなりました。

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WISS2016

2016年12月14〜16日の日程のうち、Anemoneは初日の14日デモ・ポスター発表の枠で参加しました。

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これまでの展示会とは異なり、多くの方々に研究者目線でAnemoneを体験していただきました。テーマやコンセプトだけでなく、花の見せ方やデザインなど細部に至るまで様々なアドバイスを頂く機会となりました。「婚活」というキーワードにも興味を持っていただき、結婚・恋愛経験を交えた貴重なお話も伺うことができました。

今後の展望

これまでAnemoneをユーザに体験してもらうために設けた機会は展示会を中心としたイベントだったため、今後は過去の研究で利用された生体情報の値を参考に、花が開花する生体情報の値を探索します。

しかし、生体情報から好意を推定することは非常に困難です。そのため、好意ある人に「好意を伝える」システムではなく「平常心ではないことを伝える」手段として、もしくはコミュニケーションツールとして、ひとつのエンタテイメントとしての利用を想定しています。本システムは参加者双方の生体情報を入力とし、二人の間に設置された花を成長させることで交際もしくは結婚相手を選ぶ際の参考になることが期待されます。

今後も我々は「Anemone」の開発を続け、最終的には実際にサービスでの利用を目指します。